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■映画「オールド・ボーイ」
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たたきのめされた。最初から最後までドキドキしっぱなし。心臓の弱い人にはおすすめしない。ホラーではないが、すごーくコワイ。原作が日本の劇画というのも、日本人として誇らしいような、トンビに油揚げさらわれたような。
映画ってだからおもしろいんだ! と思える。ああ、なんて韓国の映画界は自由なんだろう。こういうテーマをここまでの作品に仕上げた製作者をたたえたい。映像はあくまで美しく、残酷で、役者たちはすべて力を出しきっている。
主役のチェ・ミンシクもいいが、悪役のウジンを演じたユ・ジテがカッコいい。彼のバッタのポーズ(ヨガ)をみるだけでも映画館に足を運ぶ価値はある。
家に帰ってからも、ずっとあのメロディーが頭を離れない。とりつかれてる気がする。
★有楽町スバル座ほかで上映中 |
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| ■本 「黒革の手帖」松本清張 |
ドラマがおもしろいので読んでみた。初版は昭和58年。二十年前に書かれている。古くさく感じる部分があるのはしょうがない。一冊書くのにトラック一杯分の資料を読むという松本清張は、銀行や政治家、医学部の裏口入学などを題材に綿密な裏付けを小説のなかに盛り込んでいる。それが少しうるさくもある。
しかし、そんなことはどうでもいいのだ。松本清張は、人間の弱さや醜さを突き放して見ている。それも寒々しいほどに思いきり。そこがいい。読み終わって「えっ、ここでおしまいなの?」というくらいに、身もふたもない結末。それも、彼が描きたかった世界観なのだ。
米倉涼子演じる主人公が、原作では不美人
という設定も、突き放すための大きな要素なのだろう。いい人はひとりも出てこない。彼はきっと、美しさややさしさと無縁の世界を描きたかったのだ。セカチュウ読んで泣いてる人より、清張読んで笑ってる人のほうが信用できる。そんな気がする。
テレビドラマは脚本がいい。「反省もしなければ謝罪もしない」なんていいセリフの数々がオリジナルだということが確認できた。結末もたぶん原作とはちがうのだろう。楽しみだ。
★新潮文庫 上下巻各514円(本体) |
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| ■本 「間宮兄弟」江國香織 |
ウチの近所に姉妹ふたりが経営する弁当屋がある。姉妹はずっと独身でいま五十代。両親は亡くなっている。姉には以前縁談があったが足の悪い妹に気をつかってあきらめたという。いちばん下の弟は一度結婚したものの数カ月で妻に逃げられていまも独身。という話をある日私は母親から聞いた。「そんな噂話。失礼だよ」と私が言うと「あら、近所のみんな知ってわよ」と言う。そういう話をするときの母は生き生きしている。「じゃあ、ウチの弟(四十近くて独身)のことだって、近所でどう言われてるかわからないね」そう言うと母は黙った。
この小説の主人公は仲のよい兄と弟。三十五歳と三十二歳。マンションに二人暮らし。冬至には必ずかぼちゃを煮てゆず湯に入る。女の子を呼んだホームパーティーで花火をやるからと揃って浴衣を着る。二人ともまっとうに働き、自分のことは自分でできるし、離れて暮らす母親を気づかう親孝行者だ。ただ、二人ともずっと彼女がいない。
恰好わるい、気持ちわるい、おたくっぽい、むさくるしい、とまわりの女性に思われている兄弟。そんな兄と弟が恋をする。
二人を取り巻く女性たち。職場の同僚や近所のレンタルビデオ店のアルバイトの女子大生、その高校生の妹。誰もがそれなりにドラマチックな日々を送っている。そしてそちらの描写のほうが、やはり江國香織はうまいのだ。兄の会社の先輩の妻で、離婚を言い渡されて頑なに拒否する妻の描き方などは、いつもの調子が出ていておもしろい。
作者は男が主人公の小説を書いてみたかったのだろう。笑えるし、退屈しない。おせんべいを食べながら寝転がって読んで、読み終わったら「そろそろ晩ご飯でもつくるか」と腰を伸ばす。そんな午後のひととき小説。そういう世界が好きな女性にはベターな暇つぶし。何も残らないけど。挿し絵のようにはさまれている風景写真は邪魔。
★小学館 1365円(本体) |
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